台風やゲリラ豪雨など、「記録的な」豪雨が頻繁するようになった昨今、水害・浸水リスクを危機として捉える人が増えていると思います。武蔵小山周辺の安全性・危険性について、行政が公表しているハザードマップや地域の古老の話などをもとに解説します。

ハザードマップを見てみよう

まずは客観的な情報として、行政が公表しているハザードマップを見てみましょう。

浸水ハザードマップ

目黒区浸水ハザードマップより

こちらは目黒区が公表している「浸水ハザードマップ」から、武蔵小山周辺地域を抜粋したものです。品川区内についても記載があるので紹介します。

武蔵小山にお住まいの人ほど「え?!浸水リスクがあるの?」と驚かれると思いますが、武蔵小山周辺でも場所によっては浸水リスクがある場所もあるということが分かります。

より詳しくご覧になりたい方は、区役所のホームページからPDFで確認いただけます。

目黒区:水害ハザードマップ

品川区:風水害に関するハザードマップと浸水実績

平成30年に策定された新しいハザードマップで、「想定し得る最大規模の降雨 」に基づき作成されています。

被害の実績

品川区の公式サイトに平成時代の浸水被害の発生実績が丁目ごとに載っていました。

丁目被害棟数(床上・床下)
小山112
小山21
小山30
小山41
小山52
小山618
小山71
小山台16
小山台20
荏原13
荏原227
荏原30
荏原44
荏原50
荏原61
荏原72

平成元年~平成31年3月までのデータだそうです。最寄り駅が西小山や不動前の地区についても掲載しました。原典はこちら

いずれの地域でも、1999年8月29日発生の集中豪雨での被害棟数が多いです。なお、この時の雨量は品川区高浜の観測所で時間最大115mm、総雨量125mmでした(東京都建設局データ

上で紹介したハザードマップは時間最大153mm、総雨量690mmという想定でつくられています。

街全体として見れば安全性が高い武蔵小山

浸水リスクがある場所もあるわけですが、武蔵小山界隈は街全体として見れば水害の少ない街と言えます。

小高い丘の上の街です

武蔵小山は武蔵野台地の端に位置し、周囲よりも標高が高いです。「小山」という地名は古くからの地名で、小山八幡神社に由来するものですが、その名のとおり標高が高い地域です(武蔵小山駅周辺は約30m) 海抜数mの目黒川からは、長い長い登り坂を登る必要があります。

かむろ坂の桜2
500mの「かむろ坂」を登ると武蔵小山

街全体としては水害リスクは「低い」と言えるでしょう。少なくとも街全体が水に浸かるような想定はありません。

地域の古老に聞いても、街全体が浸水するような被害は記憶に無いという話を聞きます。また、古くから当地で暮らしている人ほど「武蔵小山は水害とは無縁」と思っている節があるようで、冒頭で紹介したハザードマップを見せると「これ本当??へー」という反応が返ってくることもあります。

津波・高潮とは無縁

2018年に東京都が策定したスーパー台風による高潮による浸水被害の予測では、23区の3割が被害を受けるという衝撃的な結果が出ています(参考:「スーパー台風」高潮で東京23区の3割浸水 都が想定

武蔵小山については、こうした最大級の災害でも高潮の被害を受ける予測はありません。また、津波についても海抜が高いため被害は想定されません(いずれも目黒川流域は要注意)

場所によっては注意が必要

地形は要チェック

街全体として見れば水害リスクが低い武蔵小山ですが、ハザードマップでも指摘されているように局所的には水害リスクが無いとは言い切れない場所があるのも事実です。

例えばハザードマップでもリスクありと記載されている後地小学校の前の通りは、谷筋のような地形になっています。

また、地下室など建物の構造によっては水が溜まりやすい場合もあります。止水板や土のうの設置、あるいは大雨が予想される場合には退避するなどの対応をおすすめします。

昔は溢れていた立会川

また、最寄り駅は武蔵小山ではありませんが、西小山を流れる立会川(現在は桜並木の道路になっている)は、大昔には氾濫していたこともありました。今も当時を知る世代がご存命だと思いますが、「腰の高さまで水に浸かった」という話を大正生まれの方や昭和初期生まれの方から伺ったことがあります。

立会道路・西小山付近の桜並木
立会道路・西小山付近の桜並木

下水道の整備や治水施設(荏原南公園の下が貯水池になっている)により、この数十年程度は浸水などは発生していないようです(品川区資料では少なくとも平成11年以降は浸水ゼロ)

最近まで溢れていた目黒川

また、最寄りは不動前駅となりますが目黒川は「氾濫する川」として界隈の中高年の間で認知されていると思います。こちらも治水施設の整備により、被害は抑えられていますが例えば1999年8月29日の豪雨では流域全体で1069棟の浸水被害が発生したとのことです。

その後、目黒線と交差する付近に「荏原調節池」を設けるなど、治水対策はより強化されています。