しばしば話題にのぼる「ムサコ論争」
「ムサコ」という略称を巡っては、メディアが「武蔵小山・武蔵小杉・武蔵小金井のどれなのか」という発信をして盛り上がって?いますが、それぞれの地域で暮らしている人たちの声があまり反映されていないものが目立ちます。この記事では、武蔵小山で生まれ育った私の視点から、「ムサコ論争」を考察します。

武蔵小山の地元民は「ムサコ」と呼んでいない?
武蔵小山での「ムサコ」という略称の扱いを紹介します。
地元の中高年は「コヤマ」と呼ぶ 30代以下はムサコも
地元で暮らしている人の多くは、「ムサコ」とは略さず「コヤマ」と呼んでいるように思います(特に中高年以上の年代)
一方、私は近隣の区立小学校を卒業していますが「ムサコ」という呼び方は同級生との会話の中でも耳にしたことがあります。概ね30代以下の世代はムサコ呼びしているのではないでしょうか。地域には「ムサコ」と冠した施設やイベントも増えており、定着した呼び方と言えます。
「最近引っ越してきた人がムサコと呼んでいる」と言う人もいますが、世代によっては地元で生まれ育った人もムサコと呼んでいるのでそんなことはないと思います。
地域の歴史は
武蔵小山駅が位置するのは品川区小山であり、武蔵小山駅も開業当初は「小山駅」と名付けられました。しかし栃木県の小山(おやま)駅との混同を避けるために鉄道の誘致にも尽力した石井千之助氏により「武蔵小山駅」という名称に改められたとされています(『あゆみ 武蔵小山商店街協同組合15年史』)
小山という地名は江戸時代からのものと推定されていますが、武蔵小山という名称は1924年に生まれた新しい呼び方と言えます。

ムサコ外の人がムサコと呼んでいることが多い
武蔵小山のことを「ムサコ」と呼んでいるのは、「武蔵小山に住んでいない人」が多いように思います。具体的には、武蔵小山に買い物や遊びに来る人、仕事や学校で通勤・通学しに来ている人、あるいは武蔵小山に来る機会も無い人です。
そもそも地元住民の間では「この辺」などと言えば武蔵小山周辺エリアと分かるので、会話の中でわざわざ「ムサコ」あるいは「コヤマ」と言う必要が無く、会話の中でそういった略称が用いられること自体少ないように思います。
また、世間一般で「武蔵小山」の知名度がそれほど高くないことをふまえると、武蔵小山外の人に対して「ムサコ」と言うこともありません。「ムサコ」と言ったら、「武蔵小杉?」と返されるからです。

「ムサコ」と呼ばれるようになった経緯は?
武蔵小山の略称として「ムサコ」が聞かれるようになったのは、この10~20年ほどの間、つまり平成の時代のことではないでしょうか。中高年以上の地元住民が「ムサコ」とは言わないことをふまえても、そのように思います。
武蔵小山という街は東急目黒線の沿線エリアですが、目黒線は以前は「目蒲線」と呼ばれ、目黒と蒲田の間を往復するだけの路線でした。しかし平成の間に南北線・三田線への直通運転が始まり、武蔵小山は東京南部のローカルな街から、都心へと開かれた街へと変貌しました。
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この過程で外部からの武蔵小山の注目度・認知度も高まったことで、「ムサコ」という略称が与えられたのではないか、と思います。
また、再開発によって消滅した駅前の飲み屋街は、末期には雑誌などで度々特集が組まれ、特にグルメやアルコール好きの人々から関心を集めていました。そのことも、「ムサコ」の略称を広める一つの要因となったのではないでしょうか。
呼びたいように呼べばいい!
メディアが度々煽っている「ムサコ論争」ですが、呼びたいように呼べばいいのでは、と思います。
既に地元の地域おこしイベントでも「ムサコたけのこ祭り」のように、ムサコと冠したものも登場しており、地元でも定着しています。

余談ですが、武蔵小山と武蔵小杉は中国語では全く同じ発音をするそうです。
「むさこ」が商標登録されている事実
「むさこ」が商標登録されています。申請を行ったのは武蔵小山駅近くにある企業です。地域名を指す言葉が商標登録されている点については疑問を感じるところです。
